「子どものやるきをなくさない方法がある。それはやる気まんなんになって取り組んでいる子に報酬を与えずに放っておくのが一番よい。」(「ホンマでっかTV」フジテレビ,
2011年1月19日放送)
これは「アンダーマイニング現象」の話です。
アンダーマイニング現象については、2010年11月に朝日新聞にも掲載されました。
アンダーマイニング効果とは、心理学者エドワード・L・デシとマーク・R・レッパーが行った実験により判明した現象で、内発的に意欲がもてる課題に外発的報酬をつけてしま
うと、すきだからやっているという気持ちが阻害され、内発的動機づけによって行われた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、動機づけが提言
する減少を言います。例えば、好きでしていた仕事に対して褒美を与えると、褒美なしではやらなくなってしまうという現象を指します。
特に子どもの時期は、脳の中に存在する内発的動機と外発的動機の二つがあり、あまり褒美を与え過ぎると、外発的動機が内発的動機づけを抑制してしまうのだそうです。
外発的動機づけは、報酬を上げ続けなければ成立しません。
ゴールに達成してから思いきり褒めてあげることは大切ですが、ゴールを目指している途中で報酬を与えると、報酬なしにはやる気が起きなくなり、自分の心の中でやる気をおこ
させることができなくなってしまうということらしいのです。
江戸川大学後藤新弥教授のゼミの学生が卒論でこのテーマを取り上げ、キッズのサッカー教室とバディキッズのようなアウトドアプログラムの違いについて論じています。
「サッカーの場合、『シュートした』『いい守備をした』といった本人の体感と同等の外的な褒美(褒められる)を客席やサイドラインから受けることが多く、また勝利による『
勝ったぞ!』という仲間との観劇や、親やコーチからの褒め言葉が与えられる。ただしこれは『何をした』という外的な結果に対するもので、サッカーで頑張っているという本来
の行為自体、あるいは内的な側面に対するものは希薄になりがちだ。アウトドア・プログラムの場合は、基本的に外的なご褒美がない。観客や応援団はいない。チームの勝利に相
当する「形のある報酬」は得られない。しかし代わりに『岩に登りきった』『雨の中を我慢して歩き続けてコースを完歩した』『カヌーに挑戦して少しできるようになった』とい
ったあくまでも内側の報酬、達成感が主であり、参加者は『自分が何かをする、一生懸命に打ち込むことで、それを終えた時には素晴らしくいい気持ちになる、。やり遂げた価値
を実感する』ことができる。このため、ものの見方、考え方において、『内側の動機や報酬』の大切さを体験で知ることとなり、成長の過程でも『外側の報酬』に依存しきること
やそのパーセントが減少するのではないだろうか。少なくとも10歳前後のゴールデンエイジにおいて『内側の報酬の価値』に目覚めることは大きな価値がある。他のスポーツ・
プログラムでも『負けても頑張るのが大切だ』といった論法で、内側の報酬の価値を力説するが、教える方も受ける側も言葉の上だけで終わることが多い」